ロシアが占領下アブハジアに直行便開始 ジョージア政府が国際法違反を非難
ロシアの直行便運航にジョージアが強く反発
5月1日、ロシアがジョージアの占領地域アブハジア(Abkhazia)のソフミ(Sokhumi)空港への定期直行便の運航を開始したことを受け、ジョージア政府は国際規範と国内法違反として強く非難した。ロシア国営通信社「リア・ノーボスチ」によると、UVT Aero航空は「需要の高まり」を理由に、モスクワ・ヴヌーコヴォ空港発の便を当初予定より2日早く運航。3月に予定されていたこの路線は、ロシアと占領地域を結ぶ初の公式航空便となった。
ジョージア政府高官が国際法違反を指摘
ジョージア与党「ジョージアの夢」のレヴァン・ダヴィタシヴィリ(Levan Davitashvili)副首相兼経済相は「国際民間航空機関(ICAO)の基準に基づき、ジョージア民間航空局が安全基準の評価・監査を実施できない状況下での空港運営は明らかな国際規範違反」と強調。2008年に制定された「占領法」に抵触する行為だと批判した。
ロシア側は西側諸国から制裁を受けているUVT Aeroに加え、iFly航空とNordStar航空もモスクワ・クラスノヤルスク発の便を追加する方針。これに対しダヴィタシヴィリ副首相は「占領法に違反する航空会社はジョージア国内での運航を許可しない」と厳しい姿勢を示した。
ソフミ空港を巡る国際的な論争
ソフミ空港では2月7日、32年ぶりにロシア機が試験着陸を実施。ロシア大統領府のセルゲイ・キリエンコ第一副長官が2月末に正式運航を発表していた。ジョージア民間航空局は「同空港は国際民間航空条約(シカゴ条約)に基づく認証を受けておらず、安全基準を満たさない」と警告を発している。
鉄道網の拡張にも懸念
航空路に加え、ロシアはソチ(Sochi)~ソフミ間の鉄道延伸を推進。2023年6月から運行を開始した電車「ラーストチカ」が2月27日に試験運転を実施した。ジョージア政府は「占領地の実効支配強化策」と批判している。
国際社会への働きかけ強化
ジョージア外務省はICAOに対し、占領地域からの国際便運航の違法性を改めて指摘する外交文書を提出。1日の声明で「ロシアの行為は国連憲章や停戦合意の重大な違反」とし、国際機関を通じた対応を要請した。
アブハジアの事実上の当局は3月26日、ジョージアの姿勢を「対立的」と非難するなど緊張が続く。日本政府も2018年の閣議決定で、アブハジアと南オセチアを「ジョージアの不可分の領土」と公式に認識している。
地域情勢への影響
ウクライナ侵攻後、西側制裁を回避するためロシアが新たな輸送回廊を模索する中、黒海沿岸の戦略的要衝であるアブハジアの重要性が増している。ジョージア政府は領土保全を堅持しつつ、国際社会との連携強化で対応を進める構えだ。
メディアソース: civil.ge