バトゥミ裁判にEU議員が出席 メディア弾圧疑惑の焦点
国際社会が見守る裁判の行方
2023年5月16日、ジョージア・バトゥミ(Batumi)市の地方裁判所で、地元メディア「バトゥメレビ/ネトガゼティ」の創設者ムジア・アマグロベリ(Mzia Amaglobeli)の公判が開かれた。この裁判にはオーストリア出身の欧州議会議員レナ・シリング(Lena Schilling)や在ジョージア・ドイツ大使ピーター・フィッシャー(Peter Fischer)が同席し、国際社会の関心の高さを示した。
アマグロベリはバトゥミ警察署長イラクリ・ドゲブアゼ(Irakli Dgebuadze)への暴行容疑で起訴されており、刑法第353条(公務執行妨害)により懲役4~7年が求刑されている。裁判では医学専門家ギヴィ・チハルティシヴィリ(Givi Chkhartishvili)が証人として尋問されたが、「ドゲブアゼ署長の右耳周辺に機械的損傷の明らかな痕跡は確認できなかった」と供述した。
EU議員が懸念表明
シリング議員は裁判前に声明を発表し「アマグロベリ氏の逮捕はジョージアにおける抑圧の象徴だ」と指摘。「彼女は批判的なジャーナリズムを実践しただけで起訴されており、これは民主主義への脅威である」と述べた。
さらに「ジョージアは本来ヨーロッパの一員だが、現在の政権が人権と報道の自由を踏みにじっている限り、EUへの加盟資格はない」と厳しく批判。傍聴理由について「沈黙を拒み声を上げる人々との連帯を示すためだ」と語った。
証言内容の矛盾点
チハルティシヴィリ医師は、ドゲブアゼ署長が「右耳付近に軽度の痛みを訴えた」と証言した一方で、裁判官に対し「発赤などの客観的損傷兆候は確認されなかった」と繰り返し強調。検察側の追及に対し「仮に発赤があっても、医学的所見として記録する性質のものではない」と主張した。
裁判所周辺では市民やジャーナリストらが「政権の囚人を解放せよ」とのスローガンを叫び、アマグロベリ支援のデモが行われた。ドゲブアゼ署長自身は5月8日の公審で「自身の懲役を望んでいるわけではない」と述べたものの、傍聴人の野次が飛ぶ中退廷する異例の事態も発生している。
複合的な法的圧力
刑事事件に加え、内務省は5月7日、アマグロベリに対し「市壁面の景観毀損」を理由とする行政事件(行政違反法第150条)を新たに提起。これは2023年1月に警察署前で抗議ステッカーを貼ったことが発端だ。
ジョージア若手法律家協会(GYLA)は4月28日、同氏が「表現の自由」「公正な裁判」など欧州人権条約の基本権を侵害されたとして欧州人権裁判所に提訴する方針を表明。日本との関係では、民主主義やメディアの独立性を重視する立場から、国際的な人権監視団体が注視を続けている。
メディアソース: civil.ge