ジョージア外国代理人法にEUが懸念 民主主義後退と加盟遠のき指摘
EU高官が民主的後退に警戒感
5月31日に施行されたジョージア(Georgia)の外国影響力透明化法(Foreign Agents Registration Act: FARA)に対し、欧州連合(EU)のトップが厳しい批判を表明した。EU外務・安全保障政策上級代表のカイア・カラス(Kaja Kallas)氏と欧州委員会のマルタ・コス(Marta Koos)拡大担当委員は共同声明で「この法律は民主主義への重大な逆行であり、EU加盟への道程をさらに遠のかせる」と警告した。
加盟再開条件に民主化要求
EU側は同時に「政府が民主主義を前進させる具体的な措置を取れば、加盟交渉再開を検討する用意がある」と述べ、サロメ・ズラビシュヴィリ(Salome Zourabichvili)大統領の拒否権を無視して成立させた現政権に再考を促した。現在のEU加盟候補国中、ジョージアだけが正式交渉開始の前提となる改革要件を満たしていない状況が続いている。
北欧・バルト諸国も相次ぎ批判
FARA法への非難はEUだけにとどまらない。スウェーデンとノルウェーの外務省に加え、エストニアのマルグス・ツァフクナ(Margus Tsahkna)外相やラトビアのバイバ・ブラージェ(Baiba Braže)外相も「基本的人権の侵害」「市民社会の抑圧」「EU統合への希望阻害」と糾弾した。
懸念される社会的分断
同法は海外資金を受けるNGOやメディアに「外国代理人」登録を義務付ける内容で、政府は「国家主権の保護」を主張する。しかし欧米諸国はロシアの「外国代理人法」との類似性を指摘し、ジョージア・ドリーム党政権の親ロシア姿勢を危惧している。首都トビリシ(Tbilisi)では法律に抗議する大規模デモが2カ月以上継続中だ。
市民社会への打撃懸念
国際人権団体は「登録義務が言論の自由を萎縮させる」と危機感を強める。実際にジョージア公共放送(GPB)など政府系メディアが批判報道を控える動きも出ており、欧州委員会は今後14日以内に人権侵害の具体的な事例報告書をまとめる予定だ。
EUの圧力にもかかわらず、与党は10月議会選挙を前に法施行を推進する構え。民主化を求める市民と親露政策を進める政府の対立が激化する中、ジョージアの政治的岐路が注目されている。
メディアソース: civil.ge