ジョージア国家保安局が指摘する主要課題と懸念事項
地政学的リスクと国内安定への脅威
ジョージア国家保安局(SUS)は2024年年次報告書で、ロシアによるアブハジア(Abkhazia)およびツヒンヴァリ(Tskhinvali)地域の占領を「国家保安への最大の脅威」と認定。占領地域ではロシア軍基地が違法活動を継続し、83件の軍事訓練を実施していると報告しました。特に、2023年に発生したビチヴィンタの別荘地問題やいわゆるアパートメント法を通じたロシアの影響力拡大が懸念されています。
西側諸国発の偽情報工作
報告書は「一部西側諸国」による組織的な偽情報キャンペーンを指摘。AI技術を悪用した偽造映像の拡散や、若年層を対象にした価値観操作プログラムが実施されていると警告しました。SUSは「外国諜報機関が教育機関やNGOを隠れ蓑に、親露的な次世代育成を画策している」と主張しています。
政権転覆計画の存在
「2024年12月14日の大統領選妨害を目的とした抗議活動が計画され、与党幹部の物理的排除まで検討されていた」と明らかにしました。ウクライナで戦闘経験のあるジョージア人傭兵グループの関与が疑われており、法執行機関員への暴力的挑発も企図されていたと報告されています。
占領地域の現状とロシアの影響力拡大
経済的依存の深化
ツヒンヴァリ地域の予算の79.5%がロシアからの資金で賄われ、アブハジアでも23.5%がロシア支援に依存。グロム村ではロシア企業「ストロイプログレス」による石油探査が開始されるなど、資源支配が進んでいます。
文化的同化政策の加速
ガリ地区とアハルゴリ地区で「開放教育センター」を設置し、教師・生徒へのロシア語教育を推進。歴史教科書の改竄を通じた「グルジア人敵視プロパガンダ」が系統的に実施されていると指摘しました。
人権侵害の深刻化
2024年には占領境界線で73人の不当拘束が発生し、11人が現在も拘束されたまま。ティモテ・ギントゥリ氏とヴィタリ・カルバイア氏の殺害事件は未解決で、国際人権団体の現地アクセス拒否が問題視されています。
サイバーセキュリティとハイブリッド戦争
国家重要インフラを標的としたサイバー攻撃が急増し、AIを活用した偽情報拡散ツールの使用が確認されました。SUSは「欧州統合プロセスの阻害を目的とした情報操作が、従来より高度化している」と分析しています。
今後の課題と対策
報告書はテロ資金調達の防止や汚職撲滅に言及し、2024年に23件の刑事事件で39人を起訴した実績を報告。国境警備の強化と移民管理の厳格化を今後の重点課題に位置付けました。
メディアソース: civil.ge